野球におけるホームアドバンテージ考
正直、とっくに手垢のついた分析テーマであるが、野球におけるホームアドバンテージについてデータを拾ってみた。
NPBのホームでの勝率はセ・パともに5割4分ほど
よく言われているとおり、プロ野球でも、ホームでの勝率はロードよりもやや高めであり、この傾向は長い歴史を振り返っても、比較的一貫して当てはまる。リーグ全体としてのホームでの勝率を拾ったのが次のグラフであり、これをみると、カープ創設年である1950年以降、多くのシーズンで5割を超えていることがみてとれる。また、1950~2019年シーズンのホームでの勝率の平均は、セリーグ:.538、パリーグ:.535となっており、リーグ間で大きな差異はないといえる。
各チーム・各シーズンの「ホームでの勝率÷ロードでの勝率-1」(いわば、そのチームにとって、シーズン中、ホームではロードと比べ、どの程度高い割合で勝利をあげられたか。以下「ホームでの超過勝率」という)をとっていき、その分布を整理したのが次グラフである。ホームでは、ロードより1~3割程度高い勝率をあげているチームが多いことがみてとれる。
日米での傾向は概ね共通
興味深いことに、MLBについて同様の計数を拾ってみても、NPBと概ね共通した傾向がみてとれる。1950~2019年シーズンのホームでの勝率の平均値は、ア・リーグ:.538、ナ・リーグ:.539と、5割4分程度である。
また、ホームでの超過勝率についても、概ねNPBと傾向は似ている。
一概に「ホームで強いチーム」はない
特に2016~18年シーズンの3連覇中、カープは本拠地で圧倒的な勝率を残していたし、2015年シーズンにセリーグを制覇したヤクルトも神宮での勝率が高かった。こうした「残像」が脳裏から離れないと、「優勝するチームは、特にホームアドバンテージを最大限に活かし、ホームで特に圧倒的な勝率をおさめている」と思いがちであるが、実は、時系列のデータをみる限り、特にそうした傾向はみられない。
次のグラフは、「ホームでの超過勝率」について、各年の優勝チームとリーグの平均値の推移を並べてみたものであり、これをみると、セ・パ両リーグとも、優勝したチームが特別にホームで高い「超過勝率」をあげているわけではないことが窺える。むろん、優勝チームはリーグの中で最も高い勝率をあげるわけだから、ホーム、ロードを問わず総じて高い勝率となることは確かなのだろうが、他チームと比べことさらにホームでの勝率が高まるとは限らないようだ。
また、特に鯉党の中では「特にホームの大声援が熱狂的なカープにおいては、ホームでの試合に強さがある」というファン心理が働きがちであるが(?)、実際には、次図のとおり、各チームの「ホームでの超過勝率」は長めの時系列(1950~2019年シーズン)でみると、あまり大差がない。
野球においてホームアドバンテージは存在するが、それほど大きいものでもない
以上を総合すると、野球において、ホームでの勝率は平均すれば5割4分程度であり、ロード(この裏返しとして平均勝率4割6分程度)と比べ、8分ほど有利、という傾向がみてとれる。ただ、様々な先行研究でみられるように、サッカーやバスケットボールではホームでの勝率が6割3~5分程度といわれているなど、他競技との比較において、野球におけるホームアドバンテージはそれほど大きいわけではない。
また、「ホームでの際立った強さ」度合いには一定のバラツキがあるが、優勝するチームは、よりホームアドバンテージを活かしている(ホームでの超過勝率が高い)とは限らず、「ホームでの際立った強さ」がどのような場合に特に現れるかは、一概にいえないようである。