クライマックスシリーズ・ファイナルステージの勝率

カープファンにとって、2017年シーズンはぶっちぎりで優勝しつつ、終盤にかけ鈴木選手や安部選手の故障に見舞われたこともあり、クライマックスシリーズ・ファイナルステージで苦杯をなめてしまった悪い記憶が今でも残っている。

クライマックスシリーズ・ファイナルステージの勝率について、少し考えてみたい。

ホームチーム(シーズンの首位チーム)のアドバンテージは3点

シーズンを優勝し、ホームで挑戦者を迎えることとなるチームには、制度上次の3点のアドバンテージが設けられていると言える。

①1勝のアドバンテージホームチームは3戦先勝で勝ち抜けるのに対し、ロードチームが勝ち抜くためには4戦先勝が必要となる)

②ファーストステージの免除(ロードチームは、ファイナルステージに上がって来る前にシーズンの2・3位チームでファーストステージ(2戦先勝)を争う必要があるため、ローテーション繰り上、ファイナルステージの緒戦でエース級の投手を先発させることが難しい)

③ホームの利ホームチームは全試合をホームで戦うことができる)

これらのアドバンテージがどの程度効いてくるのか、試算してみたい。

①1勝のアドバンテージ要因だけで、ホームチームの勝ち抜け率は65.6%にまで上昇

このうち最も大きなアドバンテージ要素は、何といっても1勝のアドバンテージである。日本シリーズのようにイーブンに4戦先勝の場合、戦力が均衡している限りにおいて対戦前の期待勝率は双方5割なわけだが、1勝分のアドバンテージがあることにより、次表のとおり(次表の白抜きがホームチーム勝ち抜けの順列組み合わせ、グレー部分がロードチーム勝ち抜けの順列組み合わせ)、ホームチーム側の期待勝率は.656まで上昇する。

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②ファーストステージ免除の要因を加味すると、ホームチームの勝ち抜け率は70.8%にまで上昇

ホームチームは、ファーストステージが免除されるため、初戦にエース投手を起用し、その後もローテーション上位の先発投手から順に先発させる運用が想定される。これに対し、ロードチーム側はファーストステージを戦う必要があり、通常、そこでローテーション上位の先発投手を使ってしまうため、その後間をおかずに始まるファイナルステージでは、3番手(ファーストステージを2連勝で勝ち上がった場合)ないし4番手(ファーストステージを2勝1敗で勝ち上がった場合)からスタートさせざるを得ないとみられる。

ここで、先発ローテーションの上位から順の防御率(厳密にはFIPベースで試算しているのだが)について、ホーム・ロード双方とも、以前の記事で紹介したとおりの仮想ケースのとおりだと仮定すると(先発投手はいずれも6回まで投げ、それ以降の救援投手はいずれも平均値どおりだと仮定)、当該モデルケースにおいて想定される各試合のホーム・ロードチームそれぞれのFIPは次表のとおりとなる。このFIPのとおりに、FIPの値が低い方がその分だけ有利になると想定すると、ホームチームの各試合の勝率はイーブンに5割ではなく、第1戦:.636、第2戦:.576、第3戦:.397、第4戦:.451、第5戦:.454、第6戦:.668と試算される。これだけだとロードチームがエース投手の順繰りとなり、ホームチームが谷間に入ってくる中盤戦でホームチーム不利となるようにみえるが、上記①の1勝のアドバンテージと組み合わせると、緒戦での有利が大きく働き、トータルではホームチームの勝率は.708まで上昇する。

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ファイナルステージにおいて想定される先発投手のFIP(モデルケース)

③ホームの利まで勘案すると、ホームチームの勝ち抜け率は74.6%

ホームの利については、以前の記事で紹介したとおり、シーズン中のホームチームの勝率は5割4分ほどとなっている。②までの計算に、このホームアドバンテージまで加味すると、ホームチームの勝ち抜け率は、.746まで上昇する計算となる。

因みに、実際のクライマックスシリーズ・ファイナルステージの成績をみると、過去13年の歴史(2007年~2019年)の中で、セ・パともにホームチーム(シーズン優勝チーム)の勝ち抜け回数は10回ずつ、ロードチーム(2位または3位のチーム)の勝ち抜け回数は3回ずつとなっており、ホームチームの勝率は.769となっている。