カープの2020シーズン前半戦を振り返る(その②)

前回の記事では、今年の前半戦を振り返って、このところ、どうにも外国人投手の獲得という編成上の運に恵まれていないことを述べた。それでは、後半戦や来季に向けた光明は何かみえただろうか。本日は「良い芽も出てきていて、悲観ばかりではない」ことについて述べる。

世代交代期に差し掛かってきたチームに、プロスペクトが現れてきた

チームは投打ともに世代交代期に差し掛かりつつある。

(1)野手

2016~18年の3連覇は曾澤選手(88年生まれ)や89年生まれのいわゆる「やきゅう世代」(タナキクマル)がセンターラインを支えたが、そろそろ次世代を考えるべき時期にきている。また、四番打者の鈴木誠也選手はまだ若いがメジャー挑戦が展望されている。

次図は、一軍の出場野手の打席数について年齢層別の割合の推移を示している。これをみると2000年代末から世代への切り替えが進み、2010年代中盤に20代後半の中堅層を構成していった。そして足許、その中堅層が徐々に30代に入り、次の世代交代を考えるべき局面に入ってきていることが確認できる。この中堅層の年代遷移は、別の記事で述べるとおり、オーダーの編成という観点からみても、2016・17年シーズンのような固定的・安定的な上位打線の構成を難しいものにしつつある。

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カープ一軍野手打席数の年齢層別内訳の推移

朗報なのは、ファームの出場野手の打席数の年齢層別内訳から一目瞭然なとおり、今年のチームは過去に例がないほどの若返りが進んでいることだ。一軍デビューを果たした大盛選手、羽月選手、正随選手、それに四番の林選手、中村(奨)選手、ルーキーの宇草選手など。

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カープのファームにおける野手打席数の年齢層別内訳の推移

そして、昨秋のフェニックス・リーグは、この超若手主体のメンバーで初優勝を勝ち取った別のファンの方が述べておられるように、フェニックスリーグでは、かつて2011~2015年にかけて、同様に若手主体で臨み好成績をあげたときの選手が3連覇の原動力になったことを考えると、この世代が中堅層・主力組へと持ち上がっていった時代に、次なる黄金時代が到来するのではないか・・と期待したい。

(2)投手

野手に比べ、投手の方が若手の台頭が早めということらしく、投手陣については野手より一足早く、一軍主力の若返りが始まっている。次はカープ一軍投手陣の投球回数について年齢層別内訳の推移を表している。これをみると、投手陣についても2000年代末からドラフト上位での即戦力(野村投手や大瀬良投手など)を含め積極的な獲得戦略を進め、若くて力強い投手陣を構成したが、2014年頃から徐々に年齢層が上昇しつつあった。それに歯止めをかけたのが、昨年は床田投手やアドゥワ投手、今年は森下投手や遠藤投手といった若鯉たちである。今シーズン前半、床田投手の調子が今一つであるが、投手のシーズン単位での好不調はつきものでもあり、調子を落とし気味の投手がいる中でも新戦力が切れ目なく登場している事実は大きい。

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カープ一軍投手投球回数の年齢層別内訳の推移

救援投手については、3連覇を支えた救援投手が勤続疲労からか軒並み調子を落としている中、塹江投手やケムナ投手、島内投手の台頭は明るいニュースである。また、2017年に最多勝を獲得した後、暫く不調続きだった薮田投手も救援投手として復調しつつある。ファームでも由宇魔神こと田中(法)投手が良い。

ただ、投手陣の台所事情が引き続き厳しい状況な中、ファームでは、前年までに一度は一軍で芽が出たはずの捲土重来組の登板が多く、むろん復活を祈るばかりだが、若手投手の登板回数がもっと増えて欲しいとも思う。次図は、ファームにおける投手登板回数の年齢層別内訳の推移を示しているが、野手の若返りが目立つのに対し、ファームでの若手の登板回数が少なくみえる。優れた若手が既に一軍に上がった結果ということかもしれないが、さらなる台頭を期待したい。故障明けの高橋(昴)投手、山口投手、平岡投手、モンティージャ投手、メナ投手とプロスペクトはいるはずだ。

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ファームにおける投手投球回数の年齢層別内訳の推移

最後に:気が早いですが、来季に向けた課題

前回の記事で述べたとおり、チームにとって最大の課題は投手陣の再建にある。そのためには、まず新外国人投手のスカウトが重要だが、コロナ禍の影響が長期化・深刻化した場合、外国人選手の新規獲得の難しい状況が続くおそれもある。そうした中、ドラフト上位で即戦力の投手を獲得することが一層重要になってくるし、優れた投手のFA宣言があった場合には臆せず獲得合戦に参入すべきではないか。あと、来季中には大瀬良・九里の両投手がFA権を獲得する見込みであり、全力をあげて繋留に努めるべきだ。

人生も野球も運が悪いときがあれば、やがて運が上向く日はやってくる。今後とも投手陣の再建など、戦力整備をしっかり進めていけば、再び優勝、そして今度こそ日本一になれる日に巡り合えるはずだ。