「ピッチャー鹿取」というけれど・・中継ぎ投手の負担について考える③

前回までの記事では、①登板数、②投球イニング数、そして③多登板の年数(勤続疲労度)に着目し、救援投手の負担について述べた。そして、カープの救援投手陣は、2010年代後半にかけて負荷が重たくなっていったことに触れた。

もう一つ着目すべき要素:登板間隔(中ゼロ日での連投数は・・)

ただ、投手の負担を考える上で、もう一つ着目すべき要素がある。それは登板間隔である。救援投手の場合、登板数が多いため、登板間隔の短さは概ね登板数で説明できているともいえる。ただ、それでも、連投なのか、それとも中1日以上の登板間隔があるのか、というのは疲労蓄積度をみるうえで重要な要素と考える。

ここで、2011年以降のカープの救援投手陣について、中ゼロ日での登板数を次表のとおり整理してみた。これをみると、いずれの年においても特にクローザーを任される投手は中ゼロ日での登板が多く、「なんJ」などのサイトで救援投手の登板日カレンダーが作られるのも頷けてしまう。

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カープ救援投手の中ゼロ日での登板数(2011年~19年)

MLBに関しては、Baseball referfenceをみると救援投手の統計の一つに中ゼロ日での登板数という項目があり、簡単に数字を拾うことができる。2019年シーズンにおける中ゼロ日登板数別の投手数の分布をみると次図のとおりとなっており、中ゼロ日での登板数が15以上の投手は、合計42人いた(球団数30で割り込むと、1チーム当たり1.4人)。全体的な傾向はカープの台所事情と大同小異だと思うが、2017年のカープは中ゼロ日での登板数が15以上の投手が3人いるため、このことは、2019年MLB平均(1.4人)と比べ、救援投手の連投に頼っていたとの見方の傍証になるだろう。

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MLBにおける中ゼロ日登板数別の投手数の分布(2019年)

これまでのまとめ:「カトリレーダー」を作ってみた

救援投手の負担をどうみるか、は奥深い論点であり、今回整理できた事柄はごく一面に過ぎないが、①登板数、②投球イニング数、そして③多登板の年数(勤続疲労度)、そして④登板間隔(中ゼロ日での連投数)に着目して分析を試みた。

これらの4要素は相互に一定の連関があるのだが、まとめとして、標題にもある87年の鹿取投手の①~④の諸要素を「1」と指数化した上で、中崎投手(17年、18年)、今村投手(17年)、フランスア投手(19年)の①~④の指数をレーダーチャートにしてみた(本当であれば、これらに加え、登板したときのシチュエーションに着目した要素を項目だてられればなお良いのだが、目下のデータ制約から当面見送ることとする)。

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「カトリレーダー」

(注)勤続疲労指数は、「前年の投球イニング数×0.5+前前年の投球イニング数×0.25×前前前年の投球イニング数×0.125」としてみた。基準となる鹿取投手(87年)の数値は、登板数:87、投球イニング数:94、勤続疲労指数:83、中ゼロ日登板数:17であり、各投手の鹿取投手(87年)の数値との比を指数として表示してみた。

これをみると、カープに限らないが、登板数、中ゼロ日登板数を中心に、複数の救援投手が、かつて流行語にもなった鹿取投手並みかそれ以上にカトラレている現実がみてとれる。

ただ、本家・鹿取投手については一時期登板数が減少したが、その後トレードにより西武に移籍し、再び大車輪の活躍をされ、西武の黄金時代の立役者の一人となった。カープの救援投手の中には、足許、やや調子を落としている選手もいるが、是非、どうにか調子を取り戻し、再びカープの大躍進に貢献してもらいたいものだ。