せめてネット上で日南観光を味わってみた件

筆者は、例年この時期には日南キャンプを見学しに行っている。特にサインをねだるでもなく、ひねもす野手を中心として期待の若手の練習ぶりを観ては、勝手に期待を膨らませている。去年のキャンプには駐米スカウトに就任したエルドレッド氏が来訪され、駆け付けたファンを喜ばせてくれた。けれど今年は一軍・二軍を通じて無観客開催だし、何より緊急事態宣言中なので残念ながらキャンプ地往訪は見送っている。

仕方ないことなのだが、切なくもある。そんなわけで、今回は殆ど旅行会社の回し者のような記事になってしまうが、せめて気分だけでも、日南観光についてネット上で思いを述べさせて頂きたい。

絶品というべき「直ちゃんラーメン」

まず何といっても、キャンプ地・天福球場の間近にある直ちゃんラーメンは、非常に美味しい。この手の話をしだすと、よく「旅先で見当たった食堂の中では一番マシなところ」という類の消極的選択に対し、自らに説得するように満足感を語る人がいるが、この店は違う。濃すぎないスープにストレートな中麺がよく合う豚骨ラーメンは絶品であり、トッピングをつけたり、餃子やチャーハンを併せて注文しても良いが、普通のラーメンだけで十分満足できる。

因みに、ここはケムナ投手が高校時代にアルバイトをしていた店としても知られている。また、キャンプ中のカープの選手たちの昼食としてこの店のラーメンが出されることもあるという。2020年のキャンプインでは、セレモニーで地元幼稚園児の掛け声の中で「ラーメンが大好きなケムナ投手」などといじられていたと(おぼろげながらに)記憶しているが、昨年の日南キャンプ中、ケムナ投手は実際に直ちゃんラーメンを食す機会があったのだろうか。

キャンプ期間中は、天福球場の駐車場に屋台が軒を連ね、直ちゃんラーメンも欠かせず出店している。筆者は、朝方からキャンプを観にいくと、ほぼ毎年のように、そこでの「朝ラー」でお腹を満たしている。

なお、何をかくそう、筆者はこの店の売りの一つとなっている「れんげ」を持っているのだが、何となく勿体ない気がして使わず部屋に飾っている。

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直ちゃんラーメンのれんげ

天福球場すぐの油津カープ商店街にあるアブラツ・コーヒーという喫茶店もおしゃれで落ち着いた雰囲気で、パンケーキが美味しい。地元商店街が行う、キャンプ中のイベント企画の中心的役割を担っているらしく、次に述べる「カープ・タウン化」に向けたクラウドファンディングに応じたりすると、この店の食事券が頂けることが多い。

アーケード付きの商店街を抜けると、すぐに堀川運河赤レンガ館にたどり着く。町の名前のとおり、この町が名産・飫肥杉の運送や漁業で栄えた歴史を静かに語ってくれる。

油津のカープ・タウン化

キャンプ地の油津は、正にカープタウンであり、街をあげてカープを応援してくれている。最寄り駅である油津駅は、2018年2月のキャンプインの日から、駅舎が真っ赤に塗られ、「カープ油津駅」との愛称が付されるようになった。また、油津カープ商店街にある「油津カープ館」から天福球場までの道も真っ赤に塗られた「カープ一本道」となっている。

時々、キャンプ期間中に一気に大勢の人が押し寄せることによるオーバー・ツーリズム状態に陥り、地元の方はかえってお困りなのではないかと思うこともあるのだが、これまでのところ、地元商店街はカープとコラボして選手もファンも温かく迎えてくれている。

また、カープ日南協力会さんは、ウェブサイトを開設し、キャンプ情報を刻々と届けてくれており、重宝している。今春は日南では二軍キャンプが行われているのだが、故障明けの大瀬良投手や西川選手など、錚々たるメンバーが集結している。

キャンプ地としての日南

さて、カープが日南でのキャンプを始めたのは1963年である。日南は宮崎県内でも温暖な土地である。日中最高気温の平年値をみると、日南は宮崎市内と比べても0.5度ほど高く、鹿児島市と比べても若干高めとなっている。

中国新聞の特集記事「カープ70周年・70人の証言」では「キャンプ地選びのポイントは、温暖な気候だった。球団マネジャーが球種各地を調べて歩き、年間の降雪日などを基準に決めた」とある点だ。九州は全体的に降雪が多くないが、実は鹿児島では時々雪が降る西南戦争で西郷軍が鹿児島を発った日も雪だったというし、カープが日南キャンプを始めた年の1月も積雪量の月合計値が65センチに達している。確かにこの記事でも続けて「バッテリー組は日南入りに先駆けて、1月中旬から鹿児島市での合同自主トレーニングに臨んだ。『ところが鹿児島は大雪でね。陸上競技場でただ走るだけだった。呉より寒かった』と苦笑いする」とある。1960年代当時は沖縄キャンプの実施が難しかったであろう中、日南は九州の中でも気温が高いうえに、積雪が少ないという優れた気象条件を満たしていたと言えよう(なお、本記事における気象データの出所はいずれも気象庁)。

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日南(油津)の2月日中最高気温(平年)

ちょっと足を伸ばすと・・

油津から少し足を伸ばすと、飫肥江戸時代の武家屋敷や城跡が残っていて、歴史好きであれば一度は行ってみたい場所だ。飫肥城はかつて島津家と伊東家の激戦の地であるが、現在に残る城郭は平和な江戸時代の政庁という印象が強い。街の中の小高い場所に築かれており、坂を上り、城門をくぐってからの階段はゆったりしたたたずまいで、出仕する侍にとっての「登城」という言葉がすんなり受け入れられる。

そして、飫肥藩出身の偉人といえば何といっても小村寿太郎だろう。明治初年に5万1千石の小藩から才覚溢れる知識人を輩出できた背景には、飫肥藩が幕末にかけて藩校を作るなど藩士教育に力を入れていたことが挙げられよう。飫肥城跡近くに小村寿太郎の生家や記念館がある。

あと、筆者はキャンプ地を往訪しても、なかなか日南周辺に宿をとることが難しいため、宮崎市内に宿泊することが多いのだが、宮崎市内では何といっても「辛麺」が美味しい。ただ辛いだけではなく、溶き卵との相性が抜群で、かつ、こんにゃく麺との辛みが良く、やみつきになる味である。市内で辛麺を提供する店は数多くあるが、筆者自身は市内中心部からのアクセスの良さもあって、「辛麺屋輪」に行くことが多い。この店では、辛さの程度を指定することができる。

この他、宮崎はチキン南蛮の発祥地といわれており、発祥の店については複数説があるようなのだが、タルタルソースを使った調理法の発祥店「おぐら」は、むね肉を使い、甘さも控え目となっていて、美味しかった記憶がある。食べログでもTOP5000の栄冠に輝いているようだ。

因みに、記事中でも触れた油津の「堀川運河」に架かる堀川橋は「男はつらいよ寅次郎の青春」の撮影の舞台となったそうだ。寅さんならずとも辛い時期が続くが、早いことコロナ禍が終息して、再びキャンプ地を往訪できる日が戻ってくることを祈るとともに、目先の話として、カープの選手たちの順調な調整を期待したい。