9回までで試合を打ち切ると、1割前後の試合が引き分けになる?!

今日もごく手短の記事となるが、2021年のプロ野球は、新型コロナウイルス感染拡大に伴うイベント開催時間への配慮から、延長戦を行わず9回までで引き分けとすることになった。

9回までで試合終了とする場合、1割前後の試合が引き分けに・・?!

こうした運用のもとでは、標題のとおり、1割前後の試合が引き分けになる可能性がある。まず、無制限に延長戦を行っていた2019年までのMLBにおいて、9回の攻防の行われた試合数を1としたとき、9回裏以降、(裏の攻撃回終了時点での得点差を集計したとき)何回裏まで同点が続いたか、について分布をとると、次図のとおりとなる。

延長を無制限に行うMLBでは、延長X回まで同点だった場合とはすなわち、X+1回に決着がついたことを意味するわけだが、今回の記事の文脈に引き付けていうと、MLB(2000~19年)では、もし試合をX回で打ち切りとした場合、どのくらいの割合の試合が引き分けになっていたか、を意味する。

もし9回で試合を打ち切りとした場合、1割強の試合が引き分けになっていたし、10回で打ち切りであったなら6%程度、12回で打ち切りなら2%程度の試合が引き分けとなる計算だ。

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MLB(2000~19年)において9回以降、何回裏まで同点が続いたか

延長を無制限に行う場合と、予め延長回数を制限している場合とでは作戦行動や試合展開に違いが生じ得るが、2016~20年のNPBをみても、概ね似た傾向がみてとれる。やはり9回裏まで同点(延長に突入)の試合数は10%前後あり、10回裏まで同点の試合数は約6%、12回まで同点の試合数は約2%となっている。

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NPB(2016~20年)において9回以降、何回裏まで同点が続いたか

NPBの歴史上、8~10%前後の試合が引き分けになるのは、試合時間「3時間」で区切っていた1970年代半ばと、「加藤球」と東日本大震災後の節電の要請のため、「12回ないし3時間半」で区切られた2011~12年以来となる。なお、1990年代前半のセ・リーグでは延長15回制をとっていたため、引き分け数が極端に減少している。

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NPBにおける引き分け率(引き分け数÷試合数)の推移

勝利数が最多のチームが優勝できない可能性も??

NPB(2リーグ化された1950年以降)の歴史上、勝利数が最多であったにもかかわらず、勝率では引き分け数の多いチームに劣後してしまい、優勝できなかったケースは9例しかない(シーズン中の勝利数最多のチームがプレーオフ敗退により優勝を逃したケースを含まない)。2021年シーズンにおいて、引き分け数が多いリーグ環境において混戦となった場合、もしかすると10例目のレアケースがみられるかもしれない。

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勝利数が最多にもかかわらず勝率で下回り優勝を逃したケース

一般論としては、延長戦を行わないルール下では、投手の戦力層が厚くなくてもひととおりの勝てるラインナップを揃えているチームが有利になりそうだ。さてはてカープはいかに。先発投手陣は悪くないと思うし、課題の救援陣もルーキー陣やケムナ投手、塹江投手などの奮起に期待といったところか。