投手のピークが21歳というのは本当か?②
前回記事では、打者の年齢曲線についてみた。今回は、投手の年齢曲線について分析したい。
勝利貢献度を年齢別に足し上げていくと先発投手は20代前半・救援投手は20代後半にピーク
前回の打者編と同様に、まずは、以前の記事で紹介した手法に沿って投手の勝利貢献度指数を測り、年齢別に足し上げてみると、次図のとおりとなり、全体としてみると26~27歳でピークを迎える。このピーク年齢の水準は、打者とあまり変わらない。
ただし、先発投手と救援投手とでは異なる傾向がみられる。2010年代について先発・救援の別に勝利貢献度指標の分布を整理すると、先発投手のキャリアハイが22~26歳にくるのに対し、救援投手については26~29歳頃がピークになっている。むろん、先発投手と救援投手との配置転換は割と頻繁に行われているので、キャリアハイ年齢の別も、純粋にポジションの違いから生まれる違いとは限らず、配置転換という人為が介在した結果なのだろう。いずれにせよ、先発について貢献度の高い投手は20代前半に多く、救援については20代後半に多いようだ。
そのため、先発投手に限って勝利貢献度指数の年齢別分布をみると、投手全体についてみたグラフと比べ「山」が左側に位置する。ただし、2000年代のように28~29歳に「山」がくることもあるなど、30歳前後までは高い勝利貢献度を維持し続けられているといえそうだ。また、打者編で2010年代にかけて30代後半から40代の貢献度が昔より高まっていることを紹介したが、投手についても同様の傾向が認められる。
年齢別の防御率の平均値をとると、出場機会のある投手は加齢にかかわらず悪化を防げている
次に、こちらも打者編のときと同様、出場機会のある選手について年齢別の平均値をみることにする。まず防御率についてなのだが、年齢による差はあまりみられない。この結果は、今回のシリーズの冒頭で紹介した「投手の防御率は21歳がピーク」というセイバーメトリクスの説明と異なってみえる。
加齢とともに奪三振が減少し、被打率が高まる
素朴に考えると、加齢とともにボールの力の衰えていくため、奪三振が減り、被打率が高まっていくように思えるし、このことは実際のデータをみても確認できる。
それでもなおシニアの投手たちが良好な防御率を維持できている背景は、低い与四死球率にある。与四死球率については、若手投手よりもシニアの方が低水準におさえられている。つまり、シニアの年齢まで出場機会を維持できる投手は、ボールの力の衰えを制球力の高さで補っているという傾向がうかがえる。
この間、被本塁打率については、年齢による違いがあまり見られない。
本日のまとめ
投手の勝利貢献度は、一般に、先発投手について22~26歳、救援投手について26~29歳頃にピークがくる傾向がある。投手は加齢とともに奪三振率が低下し、被打率が高まる傾向があるが、それでも出場機会を維持している投手は与四死球率が若手より優れており、ゆえに若手投手と遜色ない防御率水準となっているからである。つまり、こうしたシニアの好投手たちは、若手のように力でねじ伏せるのではなく、制球力の良さ、投球術の巧みさを活かした投球で勝利に貢献している姿がみてとれる。
それでは最後に、このシリーズ冒頭で述べたセイバーメトリクスの「投手のピークは21歳説」との関係について、どのように考えればよいのだろうか。この点については、次回説明させて頂く。