33試合連続安打の希少価値

1979年6月6日から7月31日まで、カープ高橋慶彦さんが33試合連続安打という偉業を成し遂げた。これは、未だに破られていない大記録である。

0.2%未満の達成確率

この記録の希少性を試算しながら考えてみよう。

この記録の達成確率は、①打率と1試合中の打数を踏まえ、1試合中に少なくとも1本以上の安打が出る確率を求め、②それが33試合連続する確率を計算することにより算出できる。

打率と打数については、試算上の前提を置く必要があり、まず、打率については、1950年以降のセ・パ両リーグの首位打者の残した打率を平均した.341と仮定してみる。

また、1試合中の打数については、次のとおり4.13と仮定してみた。

・1950年以降のセ・パ両リーグの総打数が383.9万本、総試合数が11.9万試合であり、フル出場する選手にとって1試合中に巡ってくる打数は、平均で3.73となる。

・打順が若いほど打順が巡る確率が高まる(打順が1つ上位だと、143試合シーズンにつき15打席ほど増えるといわれる)点を考慮し、一番打者の試合ごとの打数を4.13と想定してみた。

以上を踏まえると、①1試合中に安打が出る確率は、1-(1-0.341)^4.13=82.2%と計算される。さすが、これだけ打率の高い選手だと8割超の確率で最低1本の安打が期待されるわけだ。②ただ、これが33試合続く確率はたったの0.16%(=82.2.%^33)に過ぎない。「継続することの難しさ」がみてとれる。

サッカーの連続試合得点記録と比較してみても・・

少し無理のあるネタとなるが、サッカーの世界でも、たまに連続試合得点記録が取り沙汰されることがある。イタリアのセリエAでは、昨年、サンプドリアFWクアリアレッラ選手が11試合連続得点を決め、バティストゥータ氏の記録に並んだことがちょっとしたニュースになっていた。また、英国のプレミアリーグでも連続試合得点は11が最長記録のようである。

ここで、サッカーリーグで11試合連続得点をあげる確率を試算してみたい。サッカーの得点は概ねポアソン分布に従うといわれている(因みに、野球でも本塁打数は同分布に近いといわれている)。ここで、バルセロナ移籍後のメッシ選手が、出場試合数729、得点数633(04-05年シーズン~19-20年シーズン)となっており、試合ごとの得点期待値(λ)を0.868(=633/729)と仮定し、ポアソン分布を描くと次図のとおりとなる。グラフの横軸は1試合あたりの得点の期待値、縦軸はその発生確率を示している。これによると、無得点に終わる確率が42%なので、11試合連続で得点をあげられる確率は、(1-0.42)^11=0.25%と計算される。

f:id:carpdaisuki:20200725132404j:plain

メッシ選手の試合ごとの期待得点数(ポアソン分布)

(メッシ選手の出場試合数・得点数にかかる出所:Wikipedia

en.wikipedia.org

むろん、サッカーは野球と比べシーズン中の試合数が非常に少ないため、その分、記録に挑戦する機会が得られにくく、シーズンを跨いでの挑戦とならざるを得ない可能性も高いなど、単純な比較は到底困難である。それでもなお、欧州各国やJリーグを含む各地のリーグでも、なかなか記録更新が容易でない様子をみるにつけ、高橋慶彦さんの記録の希少性・偉大さを改めて実感してしまう。

 

追伸:因みに、上記のポアソン分布を前提とすると、ハットトリックの発生確率は5.7%と計算される(実際のメッシ選手のハットトリック通算達成回数は昨年12月現在で47回であり、出場試合数で割り込むと6.4%となる)。この点、中山雅史選手が98年に4試合連続でのハットトリックを記録したが、この希少性は0.57%^4=0.001%と計算される。実際、この記録は、昨年、クロアチア下部リーグ(NKドラーチッチェ・ジャコボ)のスティパン・ルチヤニッチ選手に破られるまでの間、18年間にわたりギネス記録であったらしい。