ドラフト会議のとりあえずの感想

即戦力の投手が一人でも多く欲しい、というチームの切実な課題に応えようとしたドラフト

本日、2020年のドラフト会議が行われ、7名(支配下6名、育成1名)の若鯉たちの交渉権を獲得した。

正直、筆者には、プロ入り前の選手の能力や成長性を正確に分析する能力はないし、たとえプロのスカウトであったとしても当たり外れはつきものなので、いずれにせよ、ドラフトの成果を語るのは尚早であろう。ただ、投手力不足という現下のチームの課題に、かなり分かりやすい形で応えたドラフトであったことは間違いない。上位5名が投手で、しかも上位3位までが社会人・大学生という、異例といってよいほどに即戦力投手に拘った指名の仕方である。

これまでの2020年シーズンを振り返ると、改めて、失点数の多さが最大の課題と言える。今年は主力投手の故障離脱が多かったため、やむを得ざる面もあるが、失点数水準はここ数年で最悪の水準に落ち込んでおり、投手力の再建が待ったなしの状態となっている。

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カープの「ピタゴラス勝率」

それでは、得点力が2020年シーズン並みだと仮定したとき、ひとまず勝率5割に復するためにはいくら失点数を削減する必要があるのだろうか。セイバーメトリクスでは、得失点数と勝率の関係を導く算式として「ピタゴラス勝率=(得点数の2乗)÷(得点数の2乗+失点数の2乗)」なるものがあり、いわくピタゴラス勝率と実際の勝率は殆ど一致するそうだ。このピタゴラス勝率を用いて試算すると、次図のとおり、得点数が2020年並みだとすると、勝率を5割に戻す(という最低限とも思える目標達成の)ために、なんと失点数を▲50も削減する必要があるとの結果が得られる。これをさらに単純化すると、シーズンを通じてローテーションを守り抜いた先発投手の登板回数が25前後なので、新戦力をたのみにするするとしたら、2020年シーズンのチーム平均防御率より試合あたり失点数を1点引き下げられる先発投手が2人必要という計算になる。そう考えると、ドラフト上位3人を即戦力候補の投手で固めたのは十分頷ける。むろん、もっぱら新人選手頼みというのも酷な話でもあり、ドラフトだけで満足することなく、新外国人獲得やFA参入なども検討すべきだろう。

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2020年得失点数を基に、ピタゴラス勝率が5割に復するために必要な失点数の削減幅

ちょっとずれた感想かもしれないが、ドラ2・森浦投手のチェンジアップに萌える・・

若鯉たちには皆頑張って、チームの次なる黄金時代を構築して頂きたい。なかんずく、ドラフト1位の栗林投手には即戦力になってもらいたい、否、なってもらわないと困る「151キロの球速、キレ、コントロール、球種の豊富さ、すべて良く、完成しています。それに加えてピッチングの組み立てがうまいです」との苑田さんの評である。

あと、ごく個人的には、ドラフト2位・天理大の森浦投手のチェンジアップに萌えてしまった。球速はそれほど速いわけではないが、チェンジアップによる緩急差は大きな魅力で、それで右打者の内角をえぐることができれば相当な勝ち数を期待できる投手になるのではないか。チェンジアップが得意な投手という意味では、ソフトバンク(ほか)の杉内投手にタイプが似ている

それでは、何故チェンジアップの強い投手に惹かれてしまったのだろうか、自身の心理分析(?)を試みた。次図は、2020年シーズンにおける各投手(投球イニング数が30回以上)の投球数に占めるチェンジアップの投球割合を表している。これをみると、まずもって、カープにはチェンジアップを多投する投手が必ずしも多いわけではない。それから、現在、チェンジアップを多投する投手は、どちらかというとパ・リーグに多い。そして、ここから先が問題なのだが、セ・リーグでチェンジアップの投球割合の多い投手はというと、(グラフ中にはネームを入れていないが)DeNAの今永投手、石田投手、濱口投手、それから阪神の西投手といったあたりで、要はあまりカープが得意でない相手が多い。ただ、そのように考えると、チェンジアップが得意であることは、現在のセ・リーグにおいては特に有利に作用する可能性があると言い得るのではないか。

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2020年NPBにおけるチェンジアップの投球割合

(出所)Delta社・Essense of Baseball

それに、3位で大道投手、4位で小林投手が獲れたのも、カープには朗報だ。大道投手は体力あり、速球ありで、大学野球の成績をみる限り、奪三振数が多いのが特長と見受けられる。先発でも中継ぎでもいけそうな気がする。小林投手についてはもっと上位での指名で消えてしまうかと思いきや、よく残っていてくれたものだ。

5位の行木投手も成長著しいようだ。6位の矢野選手は守備力・走力の高い東都ナンバーワン遊撃手。育成1位の二俣選手は強肩の捕手。

7名の若鯉たちには期待しかない。まずは、カープ球団との交渉を経て入団して頂きたい。そして広島の街やチームに慣れて頂きたい。なお、最初は寮に入る選手が多いだろうが、新人選手たちにおかれては、入寮時に荷物を「着払い」にするなんて離れ業をするのは、離れ業な守備をやってのけられる選手限定とご理解頂きたい。