投壊(涙)の日に「何点取れば勝てるんだっ(怒)」に対する一つの答え

今年のカープの投手陣は、救援投手を中心として調子がいまいちな選手が多く、そんなときは、つい「一体、何点取れば勝てるんだ」とやり場のない怒りをぶつけたくなってしまう。

これに対する一つの答えとして、平成以降(1989年~2019年)のNPB全試合の「得点数」「得点差」についてデータを整理してみた。

1試合当たりの得点数は3~4点という場合が多く、4点取れば5割強の勝率

いきなり本日の本題である「何点とれば勝てるのか」という問いへの答えとなるが、5割以上の勝率を残すためには「4点以上」が必要である。それを示したのが次図である。次図では、まず、平成以降のNPB全試合の得点数分布を棒グラフで示している。これをみると、1試合当たりの得点数は3~4点という場合が多い。また、次図では、獲得した得点数ごとの勝率を折れ線グラフで示している。得点数が3までの場合、勝率は5割未満(得点数3の場合の勝率は.406)となるが、得点数4(勝率.547)以上になってくると、勝率が5割を超える。参考までに同時期(1989年~2019年)のMLBの計数を拾ってみても概ね同様の傾向がみてとれる(MLBの方が若干、得点数が多めに現れているが、引き分けがなく、決着がつくまで延長戦を行う仕組みが影響している可能性がある)。

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当然のことだが、失点数の少ないチームの方が少ない得点数で勝てる確率は高い。投手力がよくないときは5点目をとりにいこう!

このようにリーグ全体の姿をみる限り「得点数4」が「勝率5割」の分水嶺となるわけだが、当然、この数値はチームの失点防御力によって違ってくる。次図は、1試合当たりの失点数の水準(X軸)別に、得点数ごと(それぞれの折れ線)の勝率を表している。当然のことながら、高得点をあげた場合(例えば得点数7の場合<薄褐色の破線>)には高い勝率となるし、得点数が些少の場合には低い勝率になる。また、失点数の水準が低いほど(グラフのX軸を左に向かうほど)勝率は高くなる。

これをみると、例えば前田健太投手が防御率タイトルを獲得し、野村投手が新人王を獲得した2012年シーズンのように、1試合当たり失点数が3.1というようなケースだと、得点数が3でも5割以上の確率で勝利でき、4点取れば6割超の勝率となる。

これに対し、野村謙二郎さんの引退年である2005年(1試合当たり失点数5.3)のようなチーム状態だと、得点数3では勝率は3割程度、4点取っても5割に届くかどうか、ということになる。つまり、投手状態が悪いときは「4点、いや、5点目を取りに行こう!」という打線の奮起が勝率5割を確保する上で大事になってきそうだ。

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失点数水準別に整理した「得点数毎の勝率」

楽な点差ではなかなか勝てない――3点差以内の試合の割合が6割超

ファン心理としては、僅差でリードしていても逆転される不安がつきないため、少しでもリードを広げて欲しいと願うわけだが、現実には「楽勝」といえるようなゲームはそれほど多くない。平成以降の全試合の得点差分布を整理すると、1点差の試合の割合が3割近くを占め、全試合の6割超は3点差以内となっている。

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NPBにおける各試合得点差の分布(1989年~2019年)

 

もし5割超の確率で「4点差以上」の大勝を期待したいならば、8点以上とるしかないっ!

むろん、チームが大量得点をあげた場合、大差で勝てる確率は高まる。次図は、チームの各試合の得点数毎に、その試合を何点差で勝利したか、という得点差数の分布を表している。仮にクローザーにセーブがつかない「4点差」以上の勝利(次グラフの黄緑色~青色~紺色部分)を「大勝」と定義すると、5割以上の確率で大勝するためには、8得点以上が必要ということになる。

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獲得した得点数毎の「得点差」の分布

カープの歴史を振り返っても、投手陣がチームを引っ張っていた時期があれば、打線が投手力不足を補っていた時期もある。投手陣が不調なときは打線が積極的に援護して、その間に投手陣の立て直しを図っていくことに期待したい。

追伸:こういう数字を整理しながら、ふと、先発投手のクオリティ・スタート(6回を3失点以内)というのは、野球の勝敗がリーグを問わず4~5点のゾーンで争われることが多い事情とよくマッチしているな、という印象を新たにした。