「4割打者」絶滅とコロナ禍の特殊なシーズン①

古生物学者であったスティーブン・グールド氏については、以前の記事で触れたとおりであるが、2003年に「4割打者の絶滅と進化の逆説」を副題とする書籍を刊行し、その中で1941年のテッド・ウィリアムズ以降、4割打者が出現しなくなった理由について説を展開…

延長戦の話の延長戦:タイブレーク制では先攻・後攻のどちらが有利か

今回は、これまでの「延長戦では先攻・後攻のどちらが有利か」という話(①・②・③)の「延長戦」として、タイブレーク制下での延長戦において、先攻・後攻のどちらが有利か、筆者なりの推論を述べたい。 タイブレーク制の導入が増えている 日本の高校野球では…

延長戦を巡るミステリー(延長戦は先攻・後攻のどちらが有利か)③

前回の記事では、「延長戦においては先攻・後攻の有利不利はイーブン」との筆者の仮説を前提としつつ、MLBにおいて「延長入り後まもなくは後攻がやや有利で、延長回が長くなるとイーブンになっていく」のは、後攻チームの方が救援投手や代打・代走などの「切…

延長戦を巡るミステリー(延長戦は先攻・後攻のどちらが有利か)②

前回の記事では、「延長戦においては、先攻・後攻のどちらが有利か」という命題に対し、まず、実際のデータをみると、NPBでは延長戦に入ると「よりホーム有利となる」のに対し、MLBでは「ホーム有利が薄れている」ことを紹介した。そして、理屈上、延長戦で…

延長戦を巡るミステリー(延長戦は先攻・後攻のどちらが有利か)①

2020年シーズンのカープは、コロナ禍の中での特殊なシーズンということもあり、残念ながら負けが多いが(涙)、延長戦の挙句の引き分けも多い。そこで、今回から3回シリーズで「延長戦においては、先攻・後攻のどちらが有利か」について推論を述べたい(全体…

「ルーズヴェルト・ゲーム」考⑤

前回の記事では、「得失点数がともに多いリーグ」と「得失点数がともに少ないリーグ」のプロコンを整理した。今回は、これまで5回にわたるルーズヴェルト・ゲームのシリーズ最終回として、結局のところ「ファンが最も選好する得点水準」がどの辺りにあるのか…

「ルーズヴェルト・ゲーム」考④

前回までの記事では、「ルーズヴェルト・ゲーム」のようにハイスコアでの接戦では、逆転がみられる回数が多くなること、そして逆転のみられる回数は、リーグ内での平均スコア(得失点数)との相関は低いが、リーグ全体として打高投低の場合には多くなり易い…

「ルーズヴェルト・ゲーム」考③

前回の記事では、「ロースコアの接戦でも相応の確率で逆転はみられるが、ハイスコアな接戦では逆転がみられる確率が高まる」ことについて、MLBとカープのデータをご覧頂いた。このことは至極当然であるが、かといって、チームの得点数・失点数の多いチームに…

「ルーズヴェルト・ゲーム」考②

前回の記事では、ルーズヴェルト・ゲームがMLBにおいて20世紀以降の全試合数のうちたった1.1%しかないことや、ルーズヴェルト大統領が「8対7」が最も面白いと言った当時、MLBが投手優位から一転、ベーブ・ルースなどのスターに牽引され打者優位のトレンドに…

「ルーズヴェルト・ゲーム」考①

今回から5回シリーズで「ルーズヴェルト・ゲーム」について考察してみたい(シリーズ全体のまとめは最終回参照)。「ルーズヴェルト・ゲーム」とは8対7で決着した野球の試合のことを指し、なんでも、F・ルーズヴェルト大統領が、1937年1月、野球記者協会から…

「やられたらやり返す」半沢直樹を観ながら野球について考えたこと

「やられたらやり返す」――穏やかでない言葉であるが、野球において点をとられビハインドの展開になったとき、逆転を目指すのは当然のことである。本日は、「逆転勝ち」についてデータをみてみたい。 3連覇中のカープは正に「逆転のカープ」 3連覇中は、スポ…

セイバーメトリクスがもたらしたもの、そして「もたらせていないもの」について

このブログを始めて3か月以上たってから、ブログを始めた理由を述べるのはいささか気が引けるが、自分なりのセイバーメトリクスに対する見方と併せて申し述べることにしたい。 やっぱり野球が好き ブログを始めたきっかけは、新型コロナウィルスの感染拡大に…

「ランナーをあまり出さない投手は良い投手」は「当たり前だ」と言えるのか考察してみた件②

前回の記事では、セイバーメトリクスの専門家の間でも投手の能力指標としてのWHIPの有効性が論点となっているが、少なくとも失点との関係を説明する指標として有用性は失われていないと述べた。そのうえで、今回は、WHIPが1シーズン限りの成績・能力の良し悪…

「ランナーをあまり出さない投手は良い投手」は「当たり前だ」と言えるのか考察してみた件①

まず当たり前のように思える話から。 ごく素朴に考えると「ランナーをあまり出さない投手」は優れた投手であるに決まっている。そうしたシンプルな見方から、MLBなどでは、1イニングあたりのランナー数」すなわち「(与四死球-被安打)÷投球回」によってシ…

「ピッチャー鹿取」というけれど・・中継ぎ投手の負担について考える③

前回までの記事では、①登板数、②投球イニング数、そして③多登板の年数(勤続疲労度)に着目し、救援投手の負担について述べた。そして、カープの救援投手陣は、2010年代後半にかけて負荷が重たくなっていったことに触れた。 もう一つ着目すべき要素:登板間…

「ピッチャー鹿取」というけれど・・中継ぎ投手の負担について考える②

前回の記事では、NPBにおける救援投手の起用法とハードさについて述べた。かつては登板イニング数、近年は登板数の多い投手数の増加ぶりが目立つというのが結論であった。それでは近年のカープにおいて、救援投手の登板数はどの程度タフなものになっているの…

「ピッチャー鹿取」というけれど・・中継ぎ投手の負担について考える①

今年のカープは3連覇を支えた救援投手陣の何人もが、勤続疲労のせいか調子があがってこない。そのことがチーム力全体の押し下げ要因になってしまっており、本日は、救援投手の登板数・登板回数についてみることにしたい。 近年、登板数の多い救援投手数が増加…

提言・藤井黎來投手は支配下登録すべきではないか

ファームの若手では、田中(法)投手の活躍ぶりが話題になっているが、育成選手契約3年目の藤井黎來投手についても、着実に成績が良化しており、「育成契約は3年」という不文律のもとでは最終年らしいが、是非支配下登録してもらいたいと思う。というか、正…

「猫の目」打線と安定のオーダー

プロ野球をみていると、毎日のようにオーダーを違わせる「猫の目」打線のチームがある一方で、かなり固定しているチームもある。これは監督の方針次第という面が強く、一概に成績の優劣と直結しているわけでもないようだが、オーダーを固定できているとき、…

カープの2020シーズン前半戦を振り返る(その②)

前回の記事では、今年の前半戦を振り返って、このところ、どうにも外国人投手の獲得という編成上の運に恵まれていないことを述べた。それでは、後半戦や来季に向けた光明は何かみえただろうか。本日は「良い芽も出てきていて、悲観ばかりではない」ことにつ…

カープの2020シーズン前半戦を振り返る(その①)

異例づくしの今シーズンも折り返したところであり、今日から2回の記事に分けて、これまでのカープの戦いぶりを中間的に振り返ってみたい。 最初に2回シリーズの記事で申し上げたいポイントを述べると、①今年の前半戦はいろんな意味で運が悪い、②良い芽も出て…

投壊(涙)の日に「何点取れば勝てるんだっ(怒)」に対する一つの答え

今年のカープの投手陣は、救援投手を中心として調子がいまいちな選手が多く、そんなときは、つい「一体、何点取れば勝てるんだ」とやり場のない怒りをぶつけたくなってしまう。 これに対する一つの答えとして、平成以降(1989年~2019年)のNPB全試合の「得…

「ランス選手9人のチーム」vs「正田選手9人のチーム」勝つのはどっち?

1987年の珍記録 1987年のセ・リーグの打撃成績には、球史に残る珍事が発生している。首位打者はカープの正田耕三選手(.333)なのだが、本塁打数がゼロ。本塁打王は同じくカープのランス選手(39本)なのだが、こちらは打率(.218)が規定打席到達者のうち最…

野球用語・考

変えて欲しい野球用語「人的補償」 日本球界の中でどうしても変えて欲しい用語がある。それは、フリーエージェント(FA)制における「人的補償」である。その選手があたかも償いのための供出物のような語感があり、いかにもネガティブな印象を与えてしまう。…

あえて安仁屋算をデータ分析的に語ってみた件(その⑤:まとめ)

これまで、その①、②、③、④と、かなり冗長に「安仁屋算」について語ってきた。要旨を整理すると次のとおりである。 ・安仁屋算では、各投手について、前年ないし前々年の実績のうち良い方をベースに若干上乗せされた勝利数が設定されていることが多い。ただ、…

あえて安仁屋算をデータ分析的に語ってみた件(その④)

前回の記事では、ピタゴラス勝率に着目し、2016年カープの成績をベースに分析する限り、チーム全体として「安仁屋算」の勝利数(勝率)をあげるためには、投打がリーグ随一であるだけでは足らず、少なくとも得点力・失点防御力のいずれかが球史に残るような…

あえて安仁屋算をデータ分析的に語ってみた件(その③)

前回の記事では、勝利数は投手本人の能力だけではなく、打線の援護や巡り合わせの要素が大きいことを説明した。そのため、チーム全体として安仁屋算にいう勝利数をあげられる確率については、投手の能力だけに着目するのではなく、チームの得点力・失点防御…

あえて安仁屋算をデータ分析的に語ってみた件(その②)

前回の記事では、「安仁屋算」を各投手別にみると、OBが選手に期待する「高い目標」としてはあながちあり得なくないが、それらを足し上げたチームの勝利数としては高めの目標としてもあり得ない、と述べた。それでは、何故、個々の投手の「高い目標」の合計…

あえて安仁屋算をデータ分析的に語ってみた件(その①)

往年のカープの大投手にして、米軍占領下の沖縄で初のプロ野球選手でもある安仁屋宗八さんが、例年、RCC(地元放送局)などで発表するカープの勝利数予想や、その計算方法は、鯉党などの間で「安仁屋算」として知られている。「十分な登板機会が与えられて絶…

クライマックスシリーズ・ファイナルステージの勝率

カープファンにとって、2017年シーズンはぶっちぎりで優勝しつつ、終盤にかけ鈴木選手や安部選手の故障に見舞われたこともあり、クライマックスシリーズ・ファイナルステージで苦杯をなめてしまった悪い記憶が今でも残っている。 クライマックスシリーズ・フ…